「夏のリヴレット」

青春の殆どが実験であるなら、そこから探り出された遠い朱夏の作品をもう一度、風に晒してみるのも面白い。

そんな夏の朝、見慣れた花はいつもより瑞々しく思え、「木や草や虫たち」がぐっと私に近づいていることに気づいた。ぼやけ眼をこすりながら、私はその一瞬を包み込む風たちと同盟書を交わした。

若い花は水の流れを汲みとり、やがて絶頂を迎え、いつしか枯れ果てて行く。
それは白秋に衰え、玄冬に死す野獣にも似ている。
私の血もいつしか年老いることに哀れ悲しむことを忘れ、ただ誇らし気にその姿を見つめ続けていくことだろう。心の庭先に豊かな稲穂を稔らせることが出来たなら。

どうやら「人生」は大理石と泥でできあがっているらしい。
何度か暗闇に征服されたとしても、決して降参はしないことだ。
臆病者たちが築き上げた平和の中にこそ、美しい自然があると思うから。

モルダウ・ディスクより「アーカイブス・シリーズ vol.2」を制作しています。