「白い紙」

音楽は無差別に人を愛す。
奏でられる音は、森の叫びであり、水の輪に揺れて眠る少年の夢。
それは旅に吹かれる白い紙。

甘苦しいまでの閃き、嵐の中に佇む孤独、砂丘の一雫、手元に鉛のペンがない限り何も残せない。
刹那の恋人。つぎに現れる旋律に胸をひろげる。

闇をすりぬけて、運河に辿り着く。
腰をまげてすくいあげ、光りに晒してそれは生まれる。

音楽は時を置き去りにして構築される。その連続だ。
無差別に人を悩まし、それはどこまでも白紙のままの恋のときめき。