「ドラム・クリニック」

僕がドラムを始めた頃、ロック・ドラムに視点を置いた教則本などは殆ど無かった。いや全部が時代的にもジャズ・ドラムについてのものだった。それでも一応ドラムのパーツの名称やセッティング等はわかったのだが、どうしてもスティックのストローク感や、練習曲がピンとこなかった。そこで、どうしたかというと、レコードでいろんなロック・ドラマーのプレイを何度も聴いて、ビート感やフィルの入れ方をコピーした。チューニングも全く自己流で、重いドラムサウンドをだす為にタムやスネアにタオルをかぶせたり、ガムテープを貼ったりしていた。タムやスネアにはミュート機構というものが付いている事も知らずにね。
そんな経験をした僕は、ロック・ドラムの教則本について、以前から強い関心を持っていた。1985年、ドラム教則本「ロックドラム入門ゼミ」の監修を始め、その後、1997年より「ロックドラムが叩けちゃった」の編著も手がけた。どちらも8ビートを基本にしたビギナー用の教則本で、ドラムセットの名称やセッティング、チューニングの仕方、ストロークの練習方法や楽典などについて詳しく説明している。ロック少年少女が途方に暮れないようにね。応用曲は毎回バンド系の曲を幅広く取り入れているが、今回はムーンライダーズの曲も新しくリズム・アレンジして掲載している。嬉しいことに改訂も今回で7回目を迎え、今や隠れたロング・セラーの様だ。ドラムに興味のある方、これからドラムを始めてみたい方、是非参考にしてほしい。
最後に「ロックドラムが叩けちゃった」のコラムから一言。「今や、ロック・ドラムの教則本は何冊もあるし、ドラム教室もたくさんある。しかし、それがラッキーだと思わないでほしい。教えこまれたものだけで、君の音楽が生まれるとは思えない。自分の力で、自分の耳とセンスで音楽を作り上げていってほしい。ロックには、規則の無い自由があるのだから。」