「野外コンサート・ホール 1/1000」

1972年の冬、卒業制作として仕上げた設計図です。
まず自然に恵まれた長野県戸隠あたりの地形を調べ、そこに仮想的に広大な森林公園を造り、その中に自分の理想とする野外音楽堂を建ててみました。
ホール・ステージの前をゆっくりと流れる川。このコンセプトが重要であり、観客は静かな流れを演出する川越しに音楽を楽しむのです。
僕は以前からこんなコンサート・ホールを思い描いていました。

公園入り口には当然ですが管理事務所や駐車場を設け、入園すると敷地の中にはお洒落なレストランもあります。公園の中を森林の緑や野鳥の声を楽しみながらコンサート会場へ向かうというアプローチも大切なことです。客席は全席指定でも対応できる形をとりましたが、ロック系のコンサートなどの時には自由に楽しめるスペースとして、ターフのコーナーを広めに開放しました。時代的にもウッドストックがヒントでした。

小劇場が隣接しているのは、小規模な音楽会でも利用できるように用意した空間で、気軽に使える多目的スペースと言う感じです。

僕はこの頃からすでに音楽をかじっていたので、ミュージシャンの立場、オーディエンスの気持ちから設計することが出来ました。
楽しみながら、卒業制作ができるなんて、とても幸せなことでした。
おまけに教授からお褒めの言葉もいただきました。
「こんな音楽堂で好きな音楽を聴いてみたいな」ですって。
出席日数が危ぶまれていたのですが、これでなんとか卒業できたわけです。そして、音楽も建築も心で描くもんだなと思いました。
構造計算は別ものですが(笑)

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