「雫という未完の歌」

2002年の12月6 日、四谷にある「風雅の舎」にて、中村裕介さん、丸尾めぐみさんと「One Step Sessions」と銘打ったライブを開催した。僕はセッションをイメージして、ステージ上で曲作りを披露するというなんとも実験的なライブを思いついた。気心知れたメンバーであるからこそ発想できた企画だ。事前に詩を用意しておき、三人が感じるがままにメロディやコードをつけて一つの楽曲に仕上げていく、その行程の面白さを演出してみた。あれやこれや雑談を交え、時にコード進行やリズム・パターンのクセなどを指摘しあったり、「さすが、ブルースだねー」とか「なんで、そうなるかな」「もっとクラシカルに」「それって、突然すぎない?」とか言い合って。

オーディエンスを巻き込んでの調和に満たされた貴重なひとときだった。楽曲としては時間切れのため中途で終わったが、あの時の詩は今も気になっている。最近、ふと思い出して少し手を加えてみた。

メロディや詩をいくら手直ししても未だに完成しないのは、再び三人の手によって仕上がることをこの曲が望んでいるからだろう。

「雫」

うまい米が喰べたい
おいしいパンをかじりたい
飯におかずはいらないさ
パンにバターをぬらないで

身体にいいもの 口にして
頭にいいものを選びたい
耳にいい音 響かせて
心にいいもの守りたい

それにはどうすればいい
それにはどうすればいい

雫がつむじの上に落ちてくる
なんという寒い朝 
夢が見れないじゃないか

山にいいもの 植えつけて
街にいいものを運びたい
空にいい風 吹きつけて
子供にいいもの残したい

それにはこうすればいい
それにはこうすればいい

雫がつむじの上で飛び跳ねる
なんという軽い足
夢がこぼれるじゃないか